Q-1 低用量ピルって何ですか?

 女性ホルモン剤です。2つの女性ホルモンに似た成分(エストロゲン、プロゲステロン)が配合されています。しかも、妊娠中と同じようなホルモンバランスになっています。

 妊娠中には、そのホルモンバランスの作用で排卵が抑制されます。「妊娠中にさらにもう一人妊娠」することがないのは、排卵が抑制されているためです。低用量ピルも同じように排卵を抑制するので、避妊に使用されるのです。

 ピルを飲む⇒妊娠中と同じホルモンバランスになる⇒排卵が抑制される⇒ピルは避妊薬として用いられる。ということです。

 

 平成11年から、いままでのお薬(中用量ピル)よりもホルモンの量を抑えた(副作用を少なくした)低用量ピルが使えるようになりました。

Q-2 低用量ピルの副作用を知りたいです

①体が慣れるまでの数カ月の間に見られる副作用

 悪心・嘔吐、おなかが張る感じ、むくみ、体重変化、頭痛、乳房緊満感、不正出血、性欲の変化、目のかすみ、コンタクトが合わなくなる、など。

②注意の必要な副作用

 血栓症、心血管障害、脳血管障害、子宮頚がん、良性肝腫瘍、肝障害、脂質代謝異常、高血圧リスクの上昇、耐糖能の低下、など。

 

 特に問題となるのが血栓症です。重篤な副作用を未然に防ぐため、投薬前の詳細な問診、禁忌・慎重投与の判断、定期的な受診、健康診断(子宮がん、乳がん検診を含む)が勧められます

Q-3 血栓症について教えて下さい

 血管の中で血液が固まり、血管に詰まることで、その先に血液が流れなくなります。

 通常妊娠中は血液は固まりやすくなります。(分娩時の出血に身体が備えるのだと理解しています)ピルは妊娠中と同じようなホルモンバランスを作るため、ピルで血栓症が増えるのも理解できます。

 海外の調査によると、通常1万人に1~5人の血栓症発症リスクが、低用量ピル服用女性では1万人に3~9人と上昇します。妊娠中および分娩後12週の血栓症発症リスクは1万人に5~20人および40~65人と報告されており、妊娠中や分娩後と比較すれば低用量ピルによる血栓症の頻度は低いことが判ります。

 喫煙や高年齢、肥満は血栓症の発症リスクとなります。内服の可否につき事前に判断いたします。

 低用量ピル内服中に以下の症状を認める場合にはただちに服用を中止し、受診をお願いいたします。早期の判断、治療のより重症化を防ぐことができます。

 ・片側または両側の下肢(特にふくらはぎ)の痛みと浮腫

 ・胸痛、胸内苦悶、左腕〜頚部等の激痛

 ・突然の激しい頭痛、持続性の頭痛、失神、片麻痺、言語のもつれ、意識障害

 ・呼吸困難(突然の息切れ)、胸が痛い、痰に血が混じる

 ・視野の消失、眼瞼下垂、ものが二重に視える

 ・身体を動かせない状態   

Q-4 副作用を疑う症状を教えて下さい。

 

 以下の症状の一つでも認められた場合は、すぐに受診をお願い致します。

 ・片側または両側の下肢(特にふくらはぎ)の痛みと浮腫

 ・胸痛、胸内苦悶、左腕〜頚部等の激痛

 ・突然の激しい頭痛、持続性の頭痛、失神、片麻痺、言語のもつれ、意識障害

 ・呼吸困難(突然の息切れ)、胸が痛い、痰に血が混じる

 ・視野の消失、眼瞼下垂、ものが二重に視える

 ・黄疸の出現、掻痒感、疲労、食欲不振

 ・長期の悪心・嘔吐

 ・原因不明の異常性器出血

 ・肝臓の腫大、疼痛(右上腹部痛)

 ・身体を動かせない状態、顕著な血圧上昇が認められた場合    

Q-5 低用量ピルのいい点について教えて下さい。

 ピルには避妊効果のほかに、副効用と呼ばれる好ましい作用があります。

 排卵が抑制されるために生理が軽くなります。生理痛や過多月経、生理不順などの生理のトラブルに有効です。生理前に見られる心の症状、痛み・むくみの症状にも効果を発揮します。その他、にきびや多毛、骨粗鬆症の予防なども期待できます。

Q-6 低用量ピルを飲んではいけない人がいると聞きました。

 低用量ピルには重篤な副作用が見られる場合がありますので、禁忌(飲んではいけない人)、慎重投与(リスクを考えて飲むかどうか判断する)を事前に判断いたします。当院では、重篤な副作用を未然に防ぐために、問診表を用いてリスク判断を行っております。

 例えば、50歳以上、または閉経後、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、産後、手術の予定がある女性、前兆を伴う片頭痛、血栓性素因などは禁忌に含まれます。他の避妊方法をお勧めします。詳しくはお気軽にご相談されてください。

Q-7 ピルの飲み方について教えて下さい

 飲み始めは月経第1日目(初日)が望ましいとされています。15日目までならば追加の避妊法は必要ないとされていますが、月経周期5日目を過ぎて内服を始めた場合には、追加の避妊法を用いるか、7日間は性交渉を控えて下さい。

 21錠タイプのピルは、全てのみ終わった後に7日間の休薬期間をおいて次のシートを飲み始めます。

 28錠タイプのものは、休薬期間がありません。今のシートが飲み終わったら、次のシートを続けて飲み始めます。

 

 ピルは毎日飲まなければいけません。もし飲み忘れた場合には

 ・1錠飲み忘れ時には、すぐそれを飲んで、次の薬は予定通りに内服します。

 ・2錠以上飲み忘れ時には、直近のピルをすぐ飲んで、残りのシート内のピルは予定通りに飲みます。7錠以上連続して服用するまでコンドームを使用するか、性交渉を避けます。服用していない時間が長くなると不正出血が起こりますが、少量ですぐ止まってしまえば問題ありません

 ・不正出血量が多いようならば仕切り直しをしましょう。どの時期でもシンプルで解りやすいく、間違いないのが「仕切り直し」です。

 

 もし飲み忘れに気付き、対処法が判らない場合にはお気軽にご相談ください。

Q-8 どのようなピルがありますか?

 低用量ピルには、一相性、二相性、三相性の3つの種類があります。女性ホルモンの配合量の違いで分類されます。症状や副作用の現れ方によって使い分けたりします。

 当院では、アンジュ28、オーソM21、マーべロン28や、その後発品であるファボワール、ラベルフィーユなどを取り扱っております。これらは自費診療となりますが、月経困難症に対しては、保険適応となるルナベル、ヤーズも処方することができます。詳しくはご相談ください。