自宅からクリニックまで、自家用車で通勤しています。今日もいつものじゃり道を下り、県道に合流しました。
太平洋の沖を通過する台風の影響でしょう。強風が大きく木々を揺らし、道沿いに掲げられた交通安全の幟がこれでもかと暴れています。大粒の雨がアスファルトに着弾し、バチバチと音を立てています。
「今日は患者さん少ないかな」森本毅郎のTBSラジオに耳を傾けます。正確に時を刻む朝のラジオは到着時刻の目安を教えてくれみゃす。・・ん?・・「みゃす」ってなん?
なにか混ざりました。鳴き声みたいな。
しばらくすると、また「みゃー」・・。
・・んんっ??・・。
鳴き声です。猫の。小猫です。か細い鳴き声。
森本毅郎は、決して猫の鳴きまねなんてしません。いつも聞いているのでそれくらいの事はわかります。
・・「みゃー」・・。やっぱり猫が鳴いてる!
しかし当然ラジオを疑います。音量を絞ります。
・・「みゃー」・・。
聞こえます。確かに!!いや、猫か。猫だ。まじか。どこだ。どこだっっっ?
瞬時にミッションインポッシブル、トム・クルーズの映像が頭に浮かびました。
天井かあぁぁっっっ?
とっさにウインカーを出し、トムが振り落とされないように、ゆっくりと車を進めます。
「もしもの時には、はーちゃんに何と言って頭を下げればよいのか。頼むから落ちないで!」
祈る気持ちで進路変更し、コンビニの駐車場に車を止めます。
急いで降ります。真っ先に天井を確認します。
トムいません。
しまった!途中で落ち「みゃー」・・
いるなあトム。
まだ鳴き声が聞こえます。エンジンルームか?風にあおられ役に立たない傘を抱えてボンネットを開けます。薄暗いエンジンルームは奥まで見渡せません。
・・・「みゃー」・・・
車を下から確認すべきか。でも下にもぐらないと。
どうやって確認すればいい「みゃー」・
トムは俺の車のどこかにいる・・・
しかし、この暴風雨の中、トムの居場所を確かめるすべはありません。朝一番で特定検診の予約も入っています。時間の猶予はありません。
最悪の事態は避けるべきだと判断しま・・「みゃー」・・・した。
コンビニの店員さんに事情を説明し、車をコンビニ前の駐車場に置かせてもらい、歩いて自宅に帰り、じいじの車を借りてクリニックへと向かいました。
スタッフの皆さん心配してましたが何とか間に合いました。予約の方、もう来ていました。危なかったです。
台風の中、猫が猫がと連呼する私の顔を、ただただじっと見つめていたコンビニの店員さん。
どう思われているかが心配です。